ライター情報
丸山大貴
Writing / Daiki Maruyama
5/26の初回開催では、西脇市の育成デザイナー※1の2名が、このイベントをきっかけに自身のアパレルブランドを立ち上げました。主催側も、ブランド側も初めて同士で、出店者が欲しい立場と、何かの機会に出店、お披露目をしたい立場とで、利害が一致したお陰です。二人のブランドがずっと成長した後であれば、初回のマルブンノイチに出店してもらうには似つかわしくなかったかもしれないし、(二人ともすばらしいコンセプトとクオリティのブランドなので、そんなことはないだろうが)反対の立場であれば、出店をお断りしたかもしれません。
幸い、二人とも確かな手応えと実際の売上を掴んでくれました。
主催側と出店者側の成熟度、知名度、集客力、そして(まだそれらが伴っていなくとも)その独自性の度合いが、ある程度一致していないとどちらかにとって負担になってしまうかもしれません。
一方で、同じアパレル分野に限って言えば、東京コレクションにも参加されるブランドの出店があるなど、初回立ち上げのマルブンノイチにとって、贅沢すぎるご縁にも恵まれました。集客や当日の盛り上がりに大いに寄与されました。
これは、主催側が出店者側に育ててもらうケースです。
そして、筆者の実の祖母の手料理である唐揚げが、220食売れました。(お買い上げ頂いたみなさま、応援してくださったみなさま、ありがとうございました!)
「ようこのからあげ」は、親類、孫たちの集まる食事の機会にずっと作ってくれていた、言わば「ただの家庭料理」でした。勢い半分自信半分で、「いつかどうにか商品化して力試しをしたい」と数年来思っていたものを、このマルシェをきっかけに、多少のデザインをつけて(主催がデザイン事務所)祖母の洋子を筆頭に身内を動員して販売したところ、上述の結果と相成りました。
これは、先の例とは反対に主催側が出店者を育てるケースです。
整理をすると、主催側と出店者との関係には、大きく以下の3つに分けられると思います。
A:フェーズ、成熟度が近い者同士
B:主催側が出店者側に育ててもらう
C:主催側が出店者を育てる
立ち上げ期のマルシェイベントにとっては、毎回いかにしてBに来てもらえるか。なぜ出てほしいのか、いかにコンセプトが合致していると考えているか、微力ながらも提示できるメリットを伝えて、なんとか出店をしてもらうことが、イベントとしての信頼性と、最短でのステップアップ、そしてやはり毎回の集客の肝です。
そうは言っても、毎回の出店者のうちBを過半数にできるかといえば、かなりエネルギーを使います。現在のマルブンノイチの力にとってはあまり現実的ではありません。
だからやむなくというわけではないが、AとCの割合が重要になってきます。まだ2回の開催を終えたばかりのマルブンノイチにとっては、A≒Cかもしれませんが、それでも敢えて区別するなら、
Aばかりでも当たり障りのない、意外性のない、ちょっと乱暴な言い方をすれば「それっぽい出店者を集めた」他でもありそうなイベントになりかねないし、かと言ってCが多くなると、主催を含めてただの素人集団になってしまいます。
Cには、多少のプチプロデュースみたいなことが必要になります。それは、ただロゴ、パッケージデザインをつくって、おしゃれな写真をインスタにあげる、というのではなく、誰に向けていくら払ってもらって、どんな体験を提供できるものか、唐揚げなら唐揚げで、市販のものやよそのからあげ屋さんと比較したときの差別化要素はなにか。そういったデザイン屋さん、マーケティング屋さんの役割が求められます。
(非力ながら、マルブンノイチはそういったサポートもしています。)
そして田舎には、特に食をはじめとした高ポテンシャルな原石が、少なからず埋まっているように思います。
ここまで、イベント開催地側、出店者側の観点から、それぞれ田舎でマルシェをやる意義を考えました。
最後は、最も重要な「来場者」にとっての意義です。
わざわざ大阪、神戸から1時間半、京都から2時間弱のマルシェへ行きたくなる理由づくりと、他マルシェとの差別化戦略です。
次回へつづく。
※1:西脇市のプロジェクト「ファッション都市構想」内の若手デザイナーのこと。
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丸山大貴
Writing / Daiki Maruyama