2019.06.27

「ここぞという時の頼み綱」にいつの間にかなっていた。

好きが乗じて、織物工場で働かれてきた「小沢クロス」の小沢さん。人と仕事の相性ってとてもシンプルなのかもしれない。

対等に仕事をするために


播州産地は、アパレルなどから仕事を取ってきて、産地全体の生産管理を行う「産元」と呼ばれる生地商社と、その仕事を分業制で行う各工程の工場によって成り立っている。かつては、機屋自身が仕事を自ら取ってきていた時代と比べて、効率性を求めたその仕事の流れが産元と工場の不自然な上下関係を生んでしまったと「小沢クロス」の小沢さんは話していた。



対等に仕事をするために、自ら仕事を生むことができる職人が必要。それが現場に身を据え働かれる、小沢さんが思う素直な考えだ。

機械好きが転じた天職


小沢さん自身は機械を触ることが元来好きだったという。それは職人、特に織物の現場では必要な一つの才能だと確信した。というのも筆者自身、産地に来て気づいたのは、機屋という仕事のメカニックな側面の割合の大きさだった。



ファッションといえば、テキスタイル、そしてデザインや芸術の分野などと結びつけやすかったのが、実際の仕事は、スムーズに織物を織れるように機械を調整したり、壊れた部分を修理したり、古くなった部品を取り替えたり、実践を通した理系の面が非常に大きかった。だから、小沢さんが機械をいじることが得意だったと聞いた時、まさに天職と思えた。



機械へのこだわり、織物の精度を誠実に上げて、こつこつとした作業を何十年も重ねるうちに、いつの間にか「ほかで断られるような難しい織物も、小沢クロスなら」と最後の頼み綱のような存在となることができたという。実際、二重ビームといわれる太さが違う経糸を特殊な装置を使うことで織ることができたり、力織機もレピアも、機械の新旧関わらず現役で動き続けるめずらしい機屋さんだ。



昔から、模型屋さんのプラモデルをみることが好きだったのだそうだ。小さい頃から物を手でかたちにする作業が好きだった原体験が、今に繋がっている。仕事の出会いや縁とは、突き詰めるととてもシンプルなものなのかもしれない。

織物以外の現場でも、いま人が足りていない

小沢さんとの会話で、もう一つ印象的だったのは、機屋以外でも織物の現場では人手が不足しているということを話されていたことだった。分業制で成り立つ産地でそれは致命的ともいえる悩みであり、なかなか解決されない慢性的な問題だ。



小沢さんは、機会があれば、やりたいという若者にまずやってもらう機会をつくって、お互いに仕事への適性や相性を見極める時間を作れたらというアイデアを口にされていた。織物の工程は、つい織りの現場にフォーカスされてしまうが、実際は染色、整経、そして経通しと何工程にも分かれている。

現場で、土地や仕事の相性を見てみるということが、もっと気軽にできたらいいなと筆者自身も思っていたので、いつか実現したい。



ライター情報

丸山大貴

Writing / Daiki Maruyama

マルブンノイチの一連のプロジェクトオーガナイザーで、普段はデザインデイレクター。当メディアを機に記事執筆にも挑戦中。一応文学部出身