2019.06.21

既存のジャガード綿織物工場にとどまらない挑戦

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ジャガードの機屋として、2代目を継いだ高瀬佳典さん。播州のジャガード屋さんとしては珍しく、自社の製品まで手がける機屋の過去、今、そして未来。

思いついたデザインは全部試してみる。


下請けの仕事を生地商社から請ける一方で、ストールをはじめとする自社製品を作り出したのは今から6年前。これまでの体制に変化の必要性を感じ、オリジナル製品を作る工場は当時今よりも多くなかった。下請けの体制から脱却することに、いち早く行動に移した織馬鹿は、日本各地がファクトリーブランドをうたうようになった現在「織馬鹿らしさとはなにか」常に考えながら作っているという。



織馬鹿の製品の魅力の一つは機屋だからこそわかる、織物の組織や密度の絶妙なバランスで生まれる風合い。播州のジャガード屋さんでは、自社製品の開発をする人はめずらしい。そして、たくさんの色糸を使うことで、表現力は豊かになる反面、重たい印象のあるジャガード織物だが、風合いを求めたジャガード織物というのも、より一層稀だ。

思いついたデザインは全て試してみることができる開発の柔軟さは大きなメーカーやアパレルブランドではなかなかできないものづくりにおける強みになると高瀬さんは話した。



社長自ら、深夜でもアイデアが生まれればすぐに工場で試織。時には自分でミシンを踏んで、製品の企画もするのだそうだ。そして、実際に売り場でどんなお客さんの反応があるかを確かめる。時代にあわせて、より質の高いものづくりをやっていくのに必要なスピード感と柔軟さだ。

いかに手間のかかることをつきつめていけるかが、生き残る可能性につながる。


人が面倒がってやらないことを進んでつきつめていくことで、差別化を図って生き残ることが大切。その言葉から、いかにご自身が忍耐強く細やかな工夫を積み重ねているかを感じられた。企画やアイデアは自分発信でありながら、あくまで時代がどんなものを求めているのかを探っていく。きめ細やかさとお客さん目線であることが必要だ。



これからも、より多くの人に自分たちの織物を知ってもらい、自社のプロダクトを使ってもらう必要があると話していた。アパレルの展示会へ自ら出展するなど、人との繋がりを作ることの大切さを感じている。しかし、現状は今も産元からのOEM生産とオリジナルの二本柱で、今もそのバランスを模索中だ。現場でたしかな技術を身につけることと同じくらいに、お客さんとの接点を作る営業力がこれからの職人には必要だと口にしていた。

デザイン、現場、営業を網羅できる商売人のような人がこれからの織物現場にこそ必要。


今の時代で、繊維に関わっていくのは一筋縄ではいかないと、正直な心のうちを明かしてくれた。産地でこれから働きたいと思っている人にも、そのことを理解して、粘り強くチャレンジを続けられるものづくりに対する覚悟を持ってきてほしいと話されていた。

これからの時代はデザインだけでなく、現場、営業をも網羅できるオールラウンダーな商売人のような人が必要。今、産地が与えられる環境を踏み台にして、大きく羽ばたいてくれる人が西脇から生まれたらうれしいと語った。


初代のお母様と、2代目の高瀬佳典さん。お母様は今も工場で現役だった。

ライター情報

龍山千里

Writing / Chisato Tatsuyama

当メディアで主に繊維関係の記事を執筆担当。普段は、関西を拠点にテキスタイルに関わるデザインの仕事をしている。西脇で好きな食べ物は、住吉屋の三色団子と、さかもとのかりんとう饅頭。