2020.12.31

少しは”商店街”の役割に近づけだろうか?

この、限られた選択肢の中からお買い物をする心地よさが、田舎マルシェのいいところ。

2019年5月の開始から数えて、この11月で8回目の開催となりました。ご来場のみなさま、出店者のみなさま、いつも場所を貸してくださる方々、今年も大変お世話になりました。

コロナ禍での開催は9月に続いて2回目。今回も開催すべきか迷いながらの計画でしたが、おかげさまで無事終えることができました。わざわざコロナのややこしいときにイベントなんかして、と自分自身でも思うところがありますが、9月よりもむしろ今回の11月のほうが、やる意義を感じていました。


それはなぜか。
二、三、思うことがありました。

◯口実があるお出かけの気楽さ
◯限られた選択肢の中からお買い物をする顧客体験
◯普段なら予定があって行けない人も、ふらっと行けるタイミング

今回は、これらをテーマにして、田舎でマルシェやってて思うことを書きたいと思います。



「神戸、大阪に車で出かけるのは、こんな時(コロナ)やから、ちょっと気が引ける言うんか、なんや罪悪感があるけど、近所で誰かが開いてくれたら行きやすいなあ」

こんな意味のことを、何人かの方が言っていました。
たしかに、伴っている責任が(いい意味)薄い気持ちがする。開催した人がいて、近所だからちょっと行く。神戸、大阪などからの出店者さんもいることは、ちょびーっとだけ疑似神戸大阪と言えるだろうか。


「友達同士で約束してごはん食べに行ったりするのは、密とか気になるし、なんかあった時にどうしようかって思う」

これも言っている人がいました。
このイベントが、このお祭りがいついつにあるから、という外せない日程なら、ある意味で外発的なきっかけに背中を押された(いい意味で)仕方のない約束、待ち合わせと言えるだろうか。
イベントは屋外での開催ということもあって、じゃあみんなで行こうってことになったそうな。
昔からのママ友6人が、ほんまに久しぶりに揃った。
こんなところで会うと思わんかった珍しい顔に会った。



そんな声がちらほらあって、商品や出店を見るのはついで、くらいなもので談笑している様子が、よかった。
ああ、こういう機会ももしかしたら提供できているのかもしれない。

何を買わなくなっておしゃれしてどこかへ出かけていくって行為は、日常にハリをもたらしてくれて、そこで人と会うこと、他人がいること、これって思っていた以上に大事なことだったのだなと、なくなってから初めて気づくことがあるように、コロナになってから痛感しましたが、これってそれなんやなと。



でも実際、”ちょびーっとだけ疑似神戸大阪”と言ったって、特定の出店者が西脇に来ただけのことやんと、そう言われてしまえばたしかにそうです、お買い物の選択肢も何分の一だろうか、ごくごく限られている。

同時に、「◯/の市」の特徴として、来場者の購買率の高さがあります。今回も完売に近い出店者さんが数件、クラフトビールに至っては、持ちきれないから一回家に帰って置いてきてからもう一回買いに来た、という方もいました。見ている限り、何も買わずに帰るという人はほとんどいないように思います。

来場者数は834人と、まだまだ小規模ですがぼくたちにとっては過去最高でした。飲食を中心にキャスティングした出店者さんたちということもあり、気軽に買ってみやすいラインナップだったのだと思います。



この限られたお買い物の選択肢が、実は心地よいのではないだろうか。
そう思いました。
理由は以下のとおり。

・出店者さんにオススメされて買う納得感
・その出店者の顔が見えるし、なんならその人が同時に作り手だから説得力がある
・「この中から選ぶ」ことで、迷わずに済むから疲れづらい
・そもそも今どき、オンライン/オフラインのあらゆる選択肢からベストな選択って困難

これって、商店街じゃない?
商店街が持つ、持っていた良さ、その顧客体験に似ているのではないかと。



商店街での顧客体験の満足度って、いろんな要素が合わさって100になると思います。

たとえば、
A:なんかあそこ行っとけばいろいろ揃う安心感
B:自分で調べたり選んだりしなくても、お店の人が教えてくれる、勧めてくれる
C:あちこち移動せずに済むらくチンさ
D:それゆえか、なんか他の商店街やAmazon、カカクコムとかで比較しようと思わず済む
E:商店街側が店同士で繋がってて、競合しすぎないようにある程度精査されているだろう


商店街の場合、これらが、
A:15
B:40
C:10
D:20
E:15
みたいな感じかな。

これが、大型モールだと、
A:30(でも意外と何も買わずに帰ってくるときある)
B:5(家電屋さんとかくらい。服屋さんにしたって、買わせたいだけちゃうん?って)
C:50(もう、車停めとけばめっちゃお店いっぱいある)
D:0(損しないように、その場でがんがんに調べてまう)
E:15(モール側が精査しているだろうが、テナント料も高いだろうし)
こんな感じだろうか。

Aは、漠然とあれだけ店あればなんかまあ買うだろう、くらいの気持ちで行っても意外となんも買わなかったりする。行く行為自体がちょっと目的化したりする、地方の家族って少なくないんじゃないだろうか。Cの要素とイメージが強すぎて。。
BとかDについては、自分の購買が目の前の人の生活や人生に直結している感じがしないからだろうか。商店街では、そこで買ったもの、そのお金が店の奥に見えている、漏れ出てきている彼らの生活にダイレクトに貢献するから、安くてコスパのいい買い物だけが、いい買い物じゃない感じさえしてくる。
商店街周辺の街の規模にもよるが、売る側も買う側もご近所さんで高頻度リピーターだから、下手なことできないという心理もあるかもしれない。



商店街のお客さんは、目的客であり流動客である感じ。あるお店にとっては目的客、その隣の店にとっては流動客。ある人にとっては、駅までの毎日の道がこの商店街だから毎日が流動客って人もいるだろう。その「目的」は、必ずしも買い物が目的ではなく、お店の人としゃべりたい、誰か知った人に出会うだろう、みたいなこともあるだろう。


◯/の市のお客さんは、広義では目的客以外はいないように思います。出店ブースも10ほど、その中に自分の買うものがあるかないかは、予め判断がしやすいし、迷うことも少ない。仮に迷ったにしても10の中から迷うのなら、楽しい迷いかもしれない。
もう8回も続けさせてもらってきたので、「◯/の市ってこんな雰囲気だ、こんな感じだ」という自分との相性の合意の上で来てくれる人にとっては、新しい出店者さんへもそのフィルターを通して安心がしやすい。継ぎ足しのタレみたいな感じかなって思います。自然と会話が生まれ、スムーズな信頼につながることが多く感じます。(おかげで、その日初めて見た1万円以上のワンピースも、とんとんと買っていただけたりします。)
その空気を味わうために、ちょっと近所へふらっと、来る方にとってもその体験自体がまた「目的」客なのだろうと。



ぼくたちもそれに甘えないように、毎回の出店者さん候補を出します。同じ顔ぶれもありながら、そればかりでも飽きてしまうし、全出店者が新顔ばかりすぎても空気感が変わってしまう。毎回ちょっと予想を超える、期待値コントロールはとても大事にしています。


当然、出店者さんの満足度も大事です。これは、以前にも書いたとおり、出店数と来場者、その購買率や客単価のバランスとコントロールです。過去8回、失敗から学びながらも、どうにか続けてこれただけあって、出店者さんには毎回それなりの売上を持って帰っていただいています。県外からの出店者さんには、「西脇の方って、ほんとにいい人が多くて」と言ってもらえるのは素直に嬉しいです。
また、出店経験が少ない方、普段からお店をやっているわけではなくて〜という方にとっては、テストマーケティングの機会となって、自信を持つきっかけとなっています。

今後、もしイベントの規模を大きくすることを目指すとしても、このバランスは損なわないようにしたいと考えています。
(と言っても、このコントロールはけっこうたまたまできている感じなのでなんとも言えないのですが。。)

イベント業が本業ではない分、入場料をとるイベントではないし、出店者さんから売上マージンをもらうスタイルでもないので、そのバランスと純度だけは保ちやすいのかもしれません。
(そのうちもしできるものなら、全出店者さんの営業利益合計 ÷ 来場者数とかの指標を、ほかのイベントと比較してみたい)




入場料がいらないイベントであることは、当然イベントエリアの明確な境界線もなく、出入り自由。ふらっとそのへんのおっちゃんが来てからあげとクラフトビールを買える、その空気感もよかったなと思います。その日がぼくたちのイベントと知ってか知らずか、ちょっと寄る感じ、近所で寄り合いが済んでついでに来たというおっちゃん連中や、コロナゆえ子供の部活の送迎がなくて会えたママたちの井戸端会議などなど。

ローカルのマルシェ、なんなら元商店街でやっているマルシェである以上、どんな人にとっても行きやすい空気は、ずっと出していたいなと思っています。
子どもたちが駄菓子を買っておっちゃんはビール、複数のレイヤーの目的が重なる場として、2021年からも(タイミングの様子を見ながら)◯/の市を続けていきたい所存です。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

ライター情報

丸山大貴

Writing / Daiki Maruyama

マルブンノイチの一連のプロジェクトオーガナイザーで、普段はデザインデイレクター。当メディアを機に記事執筆にも挑戦中。一応文学部出身