言われなければ気付かない、気づいて入ってみればタイムスリップ。そんな旭マーケットを取材しました。

趣味はなにかと聞かれると散歩と答えられるくらいには歩くのが好きなのだが、学校に通っていた頃は、定期の範囲で色々な駅で降り、その街の商店街や暮らしに馴染んでみるのが好きだった。

商店街と言っても今でもまだ現役で栄えているところもあれば、アーケードと広い道だけが残るところもあり、形は様々である。

生まれ育った西脇に残る、旭マーケットはそんな中でも群を抜いて、特徴的だと感じる。
今回はそんな旭マーケットについて取材していこうと思う。

旭マーケットって？

もともとはアーケードがあった旧商店街地区をまっすぐ歩いていくと、突如現れるのが旭マーケットである。

現れると言っても、横に目をやらなければ気付かれないくらい、生活に溶け込んでいる“異世界”という感じである。


(矢印の付いているところが、旭マーケットの入り口になる)

日本でもあまりない、木造のアーケードが残されている旭マーケット。
2つの通りがあり、全長は約70ｍほど。

決して長くはないアーケードではあるが、令和時代にこんなとこ残ってんの？？？という感じの、時代に取り残された場所である。

そしてあんまり大きな声で話してはいけないような妙な緊張感がある。
あまりにも静かすぎて、昭和にタイムスリップしてしまって戻れなくなるのではないか、、とか、そんなことも考えてしまう。


(木造のアーケードにただただ圧倒される。)

手前の通路には「おきく」という名前のスタンド(今で言うスナック)の跡が一つ。
あとは、「旭美容所」と書かれた写真左側の白い建物がお店の跡になっている。

少し建物がもろくなっている部分もあるようだが、通路もゴミなどは落ちておらず
きれいな状態が保たれている。



奥の通路は手前の通路に比べるとやや明るい。
先程の緊張感が少し解けたような気がした。

こちらにはスナック「初音」と「麻須美」の跡。

昼間だから店は閉まっているだけで、夜になったらまた営業するのではないかとか、
そんなことを考えてみたりもする。

お店の看板が残っていたりと、独特の雰囲気は他の場所にはないものを感じる。


(ウルトラプロセス！！！)

これもここに来てはじめて見た。
「配達された牛乳いれるものやと思うけど、ここに牛乳入るんかなあ、、？」と、ふと疑問に思った。

置き去りにされてきた昭和の日常を見つけるとドキドキしてしまう。

マーケットなのに、住人？

マーケットというくらいなので、かつては市場であり、その跡という認識だったのだが、どうやらそういうわけでもなく、住居として人が住んでいるところもあるようだ。
自転車が置いてあったり、時折物音が聞こえてきたり。


(共同スペース？のような場所。)

この中間にある通路で2つの通りを行き来することができる。
ここでは洗濯物が干してあったり、共同の水道なのだろうか。
猫も飼われているようで、首輪の付いた猫があるいていた。


(残っているスナックの看板)

かつて播州織が栄えた頃には、県外から集団就職した女工さんの共同宿舎という話を聞いたことがある。

確かに共同宿舎っぽい感じはあるが、それにしてはきれいに残りすぎなような。
女工さんが西脇にいたのは今から約65年前、昭和30年頃の話だそう。

美容室のところはかなり老朽化が進んでいたのですべてがあの状態でもおかしくはないなあと思った。

それにしてもお店の看板と住居が混在する光景はなかなか不思議なものである。

他の街を歩く中でなんとなく自分の中で「マーケット、市場」と「商店街」の違いを決めていて、
　
商店街と呼ばれる場所はアーケードがあることが多いのでほとんどが2階建て。
その2階部分が住居になっていることが多く、商店街として機能しなくなっても住居として人が住むことができる。


(人が住んでいるようで窓が開いている)

マーケット(市場)は機能しなくなるとお店の跡だけが残り、住居として機能することは少ない。屋根はあるがアーケードではない。
例えるなら元町高架下のようなちょっとした閉塞感があるような場所。通路も狭い。※黒門市場や錦市場のような場所は例外

と、曖昧ながらも定義しているので、建物の作りでいうと旭マーケットはマーケットではなく、商店街に区分けされてしまう。でも通路の狭さは市場っぽい、、、？

かつては宿舎であり、現在はお店が残る不思議な旭マーケット。
その詳細を次回から追っていこうと思う。