ライター情報
丸山大貴
Writing / Daiki Maruyama
丸山
「ここ、まぐろのにおいってしてくるんですか?」
大西
「いや、しませんよ笑」
丸山
「そらそうか。笑 無味無臭っぽい内装のオフィスですもんね。でもなんか、ニュートラルな雰囲気の中に、大西さんの物腰柔らかい感じも現れているような気がします」
大西
「外から覗いても、誰でも気軽に入りやすいように、ってのは意識しましたねー」
丸山
「なるほど。もちろんご自身で設計、施工されたんですよね。そのあたりのお話は後でお聞きするとして、大西さんはなんで西脇を選んだんですか??元々、僕と同じお隣の滝野出身ですよね」
大西
「そうですねえ。やっぱ滝野や近隣と比べたときに産業の街っていうのは大きいですね」
丸山
「播州織※1を建築とかの提案に織り交ぜていきたいってことですか?」
大西
「うーん、それもそうやけど、というよりも、播州織っていう産業で栄えた歴史があるからこそ、おもしろい建築物とかも残ってるしっていうのと、自分がやりたいのが、ただ建物としておもしろいとか、優れているとかだけじゃなくて、産業との関わりの中でより存在意義が出てくる建築とか、ジャンルは違うけどテキスタイルのデザイナーとか、同世代のクリエイター※2たちと、一緒に街をつくっていくっていうのが面白そうやなって。だから、建物もそうやけど、そういう人たちが西脇におるっていうのがでかいかなあ」
丸山
「なるほどなあ。そういう見方って滝野にいる時(高校生のときまで)から持ってましたか?」
大西
「いや、京都の大学で建築とかまちづくりとか学んだのがきっかけやなあ。地元の近隣でもちょうど小野市とか三木市でそういう活動が始まりつつあった頃かな?ってタイミングやったから、地方でデザインをするってことを意識しはじめたんやけど、そしたら、改めて思うと西脇っておもろいなと。」
丸山
「めっちゃわかります。僕は18歳から進学で上京しましたけど、離れて改めて見たら西脇って、かなりおもろい街やなって。一回離れるのって大事でしたよね、多分」
大西
「そうそう。同時に滝野(二人の故郷)のことも離れて客観視したけど、やっぱ滝野は播州織ほどのものづくりはないし、住みよい街って言われてるしたしかにそうなんやけど、やっぱその「住みよさ」って日本のどこにでもあるねんなあ、多分。けっこうどこも没個性的で、西脇もそういう側面もあるけど、でも散歩とかしてよく見てみたらまだ残ってたって感じやなあ。知ってるつもりになってたけど、知らんお店とか路地とか、おもしろい建物とかも意外とあるなあって」
丸山
「その通りですね。特に旧商店街の一帯※3って、そんなに用事ないですもんね。地元や近隣の人もあまり知らん人も多いのでは?」
大西
「そうやと思いますね。でもやっぱりあの一帯は、ガチャマン時代※4とか女工さん※5がいっぱいおったときは賑わったやろし、やっぱりいい建物も多いしなあ。
実際、「昔はすごかった」って親とかおじいちゃんとかから聞くけど、僕らの世代からしたら実感ないし。でもこの写真とか見たらほんまに賑わい感じるし、いい建物が多いのも頷けるよなあ」
丸山
「そうですね、僕もこの写真見たときは、どこの三宮やろこれはって思いました」
大西
「そうやね。この時代をリアルには知らんし、「昔はよかった」の昔はもう60年くらい?かな。西脇の全盛期は。その時代はもう戻って来ないし終わってるんかもしらんけど、僕ら世代が歩いてみて「おや?」って思える建物とか路地とか、残ってたことでこうして西脇に興味を持てたってことやもんなあ」
丸山
「そういう意味では、まだギリギリ「あの時代」の延長線上にいるというか、ギリギリ終わってなかった時代に僕らは西脇に出会えたというか。小学生の頃までは大劇※6もあったわけやし」
大西
「うんまあ、そやねえ。」
丸山
「ちょっと大げさ言いましたね。笑 大西さんがなんで京都や大阪とか、はたまた故郷の滝野ではなく西脇を選んだかって話でしたよね」
大西
「はい笑 三木とか小野もものづくりがあっていい街やけど、デザインを絡めた活動とかは先行事例があるし、神戸に近いし。篠山もマルシェとかすでにあるし大阪へ電車で出やすいしなあ。やっぱり西脇が一番魅力あるし、やるならまだ始まってないところがいいなあって」
丸山
「神戸や大阪からの絶妙な距離大事ですよね多分。行こうと思ったら電車かバスで行けるけど、三木の人らほど気軽に行けるわけじゃないし、適度に都市部から離れているからこそ、独特の歴史と文化形成したんやろなあっていうのが、西脇の魅力の所以かなと」
大西
「それはあるやろね。やっぱ西脇は西脇で一つの都会やったんやろね。昔は」
丸山
「そうですね。僕の母親なんかでもなんかお買い物する時に三宮行く前に一回西脇の商店街へ行ってみて、それでもなかったら三宮とか大阪へ行った、って言うてましたわ」
大西
「ちょっと昔まではそういう立ち位置やったんやろね」
大西
「多分あまり根付いてないっていうか、それ何屋さん?って感じかもですね」
丸山
「それは、設計とかプランニングとかやる人も大工さんとか工務店って思われていて、だからそれだけ(設計だけ)をやる人ってあまり認識されていない、みたいなこと?」
大西
「まあそんな感じかな。なんか知ってたとしても設計をそれだけをやってる人に頼むってなると、なんか多分田舎の人にとってはハードル高いんちゃうかなと思うんですよね。その敷居を下げたいって気持ちがずっとあって。だから僕がここに事務所構えたんもそういう理由とかもあって」
丸山
「ああ、地元の人がちょっと食材買いにきたついでに寄れるみたいな?」
大西
「そうそう。ここ(卸市場)って昔からあるでしょ?だから地元の人たちにとって行き慣れてるし、日常の中にある設計事務所っていうのがよくて」
丸山
「なるほど」
大西
「だからがっつり建築物とか家の設計っていうんじゃなくても、ちょっと棚つくるとか、家具のレイアウトのアドバイスほしいとか、そうやって相談してもらえる存在でいたいなって気持ちがありますね」
丸山
「あーそれめっちゃいいですね。お金のもらい方難しそうやけど笑」
大西
「そやねん。それはある。けどまあ、まずは気軽に相談できる人、設計事務所ってそういうものって西脇の人たちに認識されたいっていうのがでかいかなあ。まぐろ屋さんの隣に設計事務所?ってなるかもやけど、僕の中ではだからけっこう気に入ってるんよ」
丸山
「外から中がよく見える事務所やし、前通るときに覗いてみて大西さんがおったら、あんまり用事なくてもちょっと喋って、会話の中でそういえば!ってなんか相談とかされる感じとかになれたらいいですね。僕の今度の西脇支社※7もそんな存在にできたらいいな思いますわ」
大西
「そうやね、今度の丸山くんの事務所もそうやけど、その建物とか施設の役割とか人の動線とか、近隣に与える影響とか、そういうソフト面とかも考えながらやってくのが楽しいから、そういう仕事増やしていきたいなあ思いますね」
677-0054
兵庫県西脇市野村町800-1 旬菜館敷地内
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丸山大貴
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