ライター情報
仲埜 佑菜
Writing / Yuna Nakano
4月からマルブンノイチのPR担当として日々奮闘中。
西脇で好きな食べ物は「よりふじの回転焼き」
お風呂は家にあるし、たまに温泉施設に行くことはあっても、地域に根づいた昔からあるような銭湯には今まで行ったことがない。
きっと筆者と同じ20代の方とかはそんな人が多いと思う。
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取材に応じてくださったのは、岸本美江さん。
旦那さんと2人で番頭さんをしている。
西脇温泉は今年で54年目になる銭湯だ。
「おかあさんが初代って少し意外です、もっと昔からやってはったんやとおもってました。」
ーーーー「そうよ。でもね、ここの温泉は確か大正時代からあって、経営者が色々変わって私らが今しよるんよ。3回ほど変わったてきいたかなあ。」
西脇に古くからあるお店はだいたい、ずっとその家の人が代替わりでやっているイメージがあったので、経営者が変わって行くのはなんか新しいタイプだな、と思った。
銭湯物件を居抜きで継承してきた感じ。いい。
(お釜ドライヤーっていうらしい、、。)
創業が昭和の41年だと、西脇がまだ播州織(繊維産業で)盛り上がっていた頃になる。
「いまも夜に車と自転車あるの見ますけど、その頃はもっとたくさんの人がきよったんですか?」
ーーーー「そやねえ、その頃の西脇は栄えとったもんねえ、、。営業時間も深夜の1時までしよったんよ。」
今の西脇で深夜1時まであいているお店といえばぎりぎりスナックか、チェーン店かぐらい。当時は深夜1時まで営業していてもお客さんは多かったそうだ。
そういえば、以前にコラムに登場した喫茶マンボ、この西脇温泉のすぐお隣なのだが、マンボのおばあちゃんも言っていた。
飲み屋やスタンド(当時のバーみたいなお店)で働くお姉ちゃんたちが、仕事終わりに西脇温泉でお風呂に入って、そのあとマンボで一服。
だから、マンボは当時夜中の2時まで開いていた。
【喫茶マンボのコラムはこちら】
https://marubunnoichi.com/columns/lACcRGPj2
銭湯で気持ちよく、一日の疲れを洗い流した後にマンボでコーヒー、
いい。いい!
今で言うチル、、いい!
そのお姉ちゃんたちをはじめ、当時西脇で暮らし、働いていた人たちが、この街の中に自分らしい時間、過ごし方を見出し、それを謳歌していた様子が目に浮かぶ。あこがれ、、、
しかし、当時ほど西脇には労働人口もなく、当然、銭湯の利用者は減ってきている。
西脇駅※1があった当時は、西脇温泉があるあたりを駅前、高田井※2を駅裏と呼んでいたため、かつて西脇温泉は「駅前温泉」という屋号だったそう。
もう西脇には、銭湯や温泉施設の類いも随分なくなってしまって、市内に残るお風呂屋さんはもうここだけになっている。
「昔はほかにも銭湯って西脇にはよくあったんですか?」
ーーーー「どの家にも昔はお風呂がなかったから、町ごとに銭湯があったんよ。だからこの辺にもいっぱいお風呂屋さんはあったんよ。うちはここ行く言うてある程度決まっててね。」
「いまもやっぱりその常連さんが多いですか?」
ーーーー「そやねえ、常連さんも多いけど、ふらっと入って来られる方もおるよ。でもこの前面白いお客さんが居てね___
聞くところによると県外からわざわざ近くのホテルを取って、西脇温泉に来てくれた方が居たそうだ。念願の西脇温泉やったと話していたという。
(実は季節によって変わっている暖簾)
___なんやえらいマニアックで変わった人やなあと思ったけど、やっぱりそうやって来てくれたりすると嬉しいものねえ。」
利用客も一時に比べるとかなり減ってしまったというが、こういう出来事がやりがいに繋がると話してくださった。
かつては重油でお風呂を沸かしていたそうだが、今は薪でお風呂を沸かしているため夕方になると西脇温泉の周りは薪を燃やす匂いがしている。(それもなんとなく西脇の風景とあっている気がして良いなと思っている。)
薪で沸かしたお風呂は体の芯まで温まってとても気持ちがよく、湯冷めしにくい。
冬でもシャワーで済ませることが多いと言われる現代だが、それでも冬になるとシャワーでは体が温まらないため、銭湯に来る方も多いそう。
ーーーー「若い子、おじいちゃんおばあちゃんも一人暮らしが増えてきているでしょ。夏場はシャワーで済ませられるけど、冬はやっぱり湯船に浸かったほうが良いわあって来てくれる人が多いよ。その人らがおるから私らもやっていけるねえ、言うたりしてるんやけどね」
現代では建てられる家にはお風呂が付いているのが当たり前、家でお風呂に入るのが当たり前。そのため銭湯にいくことが非日常になっている人も多いと思う。
たまに温泉に行くと家ではシャワーで済ませることが多い為、暑い日でもゆっくり湯船に浸かるとやっぱり気持ち良い。
(お風呂は浅いのと深いのだけ、シンプル!シンプルだからいい)
銭湯の良いところが広まって欲しいとおもいつつも、銭湯は年々減って行っているのが事実。
実は筆者は、市内に生まれ育って20年、このたび初めて西脇温泉を利用した。
そして、普通によかった。(今とは少し違ってほんの少し不便に感じることもあるけど、それも味かな)今日は疲れた!今日は頑張ったぞ〜って日、あの気持ちいい湯船にまた浸かりに行きたいなあと思った。月に2、3回とか。
それが微力ながら私にできること。
そして、「ここにまだこんな銭湯残ってますよ〜!」県外の方や、銭湯マニアの方のような昭和の雰囲気が好きな方へ、頑張って声を届けること。
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ちなみに、
最近流行りの定額制住み放題サービスADDressのユーザーに代表されるような、アドレスホッパー※3の方々!個人的には、西脇を気に入ってもらそう!と思っています。
渋い銭湯と渋い喫茶店、そのまま住める状態の空き家も残っているこの一帯なので、ぜひしばらく滞在されてみてはいかがでしょうか?
弊社事務所である古民家も、空調Wi-Fi完備でワークスペースを貸し出しています。
ぜひ、一緒に仕事終わりに西脇温泉へ繰り出しましょう〜
※1: 現在の西脇ロイヤルホテル周辺にあったJR鍛冶屋線の駅
※2: こうだい と読む。西脇市の町名
※3: 賃貸物件や持家など特定の住居を持たずに、土地を移動しながら生活をする人・ライフスタイル
西脇温泉
〒677-0015
西脇市西脇982-10
TEL : 0795-22-2249
定休日 : 金曜日
営業時間 : 16:00~21:00
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仲埜 佑菜
Writing / Yuna Nakano